男木島、教育プロジェクトを通して考えたこと

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今年度の学校での取り組みを終えて、学校で子どもたちの近くで学習を見守ったメンバーの感想をお送りします。今回は学校で子どもたちと活動をした菅谷美奈海さんの感想記事です。美奈海さんは現在香川大学大学院教育学研究科に所属し、「子どもの主体性」をテーマに研究をしています。

子どもたちが男木島にブランコを作る

ブランコづくりを始めることになった経緯は、子どもたちの問題意識からです。「男木島をもっと楽しい場所にしたい」という思いからスタートしました。材木探し・木の計測・設 計図の作成など一から子どもたちが行ってきました。ここまでの授業を振り返って、「子どもの学び」という視点から3点にまとめて書きていきたいと思います。

体験的な学び

子どもたちと何度も接する中で、子どもたちの意識や発言が変わる場面が何度か見受 けられました。それは、自分自身で「感じる」という体験をした後です。フィールドワー クに出かけ、自分の目で見て、手で触れてみることで、次にやりたいことややらないといけないことが明確になります。時には、「できない」「難しい」といった壁にぶつかることもあります。ですが、体験を体験だけで終わらせないようにこういった時はみんなで話し合い、解決策を考えていきました。特に「次どうしたい?」「どうなったらいい?」と問い、子どもたちの声を聞くように心がけました。

教科横断的な学び

ブランコ作り自体は、総合的な学習の時間を使って行っていますが、特に設計図を描く時間では縮尺を考える力や、正確に作図をする力が必要になってきます。用務員さんに設計図の書き方を聞きに行ったときは、少し難しかったようでポカンとしていたのですが、プロジェクトメンバーや先生に少しずつ教えてもらいながら設計図を完成させることができました。最初は渋々取り組んでいたのが、徐々に「次に計算するのは?」と前のめり になっていく様子が印象的でした。

生きた学び

この授業は、ブランコの完成を目指して行われていますが、ブランコの作り方を知るというだけが目的ではありません。自分の考えを相手に伝える力、物事の先を見通す力、同 じクラスの友達や学校の先生・プロジェクトメンバーと協力しようとする協調性、用務員さんや地域の人などを巻き込む力など、すべて書き尽くすことはできませんが、「ブランコを作る」という目標に向かって、様々な能力を伸ばすことにもつながっていると思います。この授業を進めるにあたって、プロジェクトメンバーが一番大事にしてきたことは 「子どもの主体性」です。そのために自分たちに何ができるかということを一番話し合っ てきました。プロジェクトチームでの授業後の振り返りでは、子どもたちの姿勢も共有しながら、次の授業づくりを考えるようにしました。

ここまで3つの学びについて論じてきましたが、このプロジェクト最大の魅力は多様な学び方だと思います。円になって話し合ったり、学外に出かけたり、ネットで調べたり、地域の大人に聞きに行ったりしました。学び方に関して、今年度より施工される学習指導要領でも「どのように学ぶか」が示されており、「主体的・対話的で深い学びの実現」が叫ばれています。こうした学び方は一見すると、ゴールから遠ざかっているようにも思えますが、「考える力」を養うには非常に重要な過程だと考えます。答えがないからこそ、自分たちで最適解を求めていく必要があります。もちろん学習環境が整った環境での学びも大事です が、何もない環境で学びをどのように創造していくかという点でも意義のある授業だと実感しました。

今後に向けて

小学校とのコラボ授業が2020年の幕明けとともに決定し、ここまで準備・授業を実施してきました。特に印象に残っていることとして、「授業づくり」があります。授業づくりというと教育実習中に学生同士で作った記憶がありますが、このプロジェクトに所属するメンバーは様々な人が所属しており、それぞれが持つ専門性はバラバラです。お互いの持つ強みを生かしながら、授業を作っていくことは新鮮で私自身勉強になることがたくさんありました。

そしてこの男木島小学校とのコラボ授業はまだ始まったばかりで、うまくいかないことや手探りなところもありますが、文科省が推進する「社会に開かれた教育課程」の実現につながる一歩だと思います。まずは、ブランコ完成に向けて引き続き授業を行っていきながら、 子どもたちにとってのどのような学びにつながるのか省察し、より有意義なものにしていきたいと思います。