「男木島、未来の教育プロジェクト」の活動で感じたこと、考えたこと

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今年度の学校での取り組みを終えて、学校で子どもたちの近くで学習を見守ったメンバーの感想をお送りします。今回は学校で子どもたちと活動をした竹下永真さん(株式会社フレップテック)の感想記事です。フレップテックは高松市内の公立学校でプログラミングの授業を展開しています。

私は、昨年の11月から「男木島、未来の教育プロジェクト」(以後「みらプロ」と表記)に参加させていただきました。今回は男木小学校とのコラボである小学校教育での“勝手クラブ”の活動を通じて、感じたこと、考えたことを述べていきたいと思います。

全体を通しての感想

今回、学校とのコラボが決まり、私がはじめに抱いた感情は「歓喜」より「不安」でした。これは私が教育一家に育った影響により、通常、学校の授業では教員がゴール(小学校では目当てにあたる)を設定し、そのゴールに向かって課題解決していくのが一般的だと思い込んでいたからです。それに対し、みらプロの勝手クラブでは、「大人がゴールを定めない」を一つの決まりとしています。そのため、通常の学校の授業形式とは異なっており、総合学習の時間としてどう活動を進めていくのかが難しく、こういった理由から先に述べた「不安」がどうしても拭えませんでした。その「不安」が活動を進めていく中でどう変化していったのかを中心に話して行こうと思います。

まず、第一回、第二回の活動では、「男木島でやりたいこと!」をもとに子供たち自身でゴールを設定することが主な活動内容でした。この二回の活動では私の中の「不安」が的中する形となりました。最初に私が想定していた時間より子供たちがゴールを設定するのに⻑い時間を要してしまう結果となり、調べ学習を進めながらもどこか授業自体がマンネリ化してしまっているのではないかと感じていました。それでもこの二回の活動で子供たちが一生懸命考えて立てた『丸太を使ってブランコ作り』という目標を私たちも子供と同じ立場になって達成しよう!という意気込みで以降の活動に臨みました。

第三回以降の活動では結果として私の中にあった「不安」が大きく変化していく内容になりました。第三回〜第六回の活動は先の活動で掲げた目標を実現させるために実際に材料集めやブランコの作成方法の策定、設計図作成などを行いました。これらの活動を進めていく中で感じたのは子供たちの活動に対する意気込みの違いでした。

通常、大人が設定したゴールだと、やはり子供たちの中で与えられた課題が自分が興味のあることでやる気に満ちている子とそうでない子に分かれ、それに伴い子供たちの理解に差が生まれ、いわゆる「温度差」というものが発生してしまうケースが多いです。みらプロの場合、ゴールを設定しているのが子供たち自身であるため、授業内で「温度差」が生じることなく、授業に参加する児童全員が自主性、責任感に富み、それに比例して理解も深くなっている印象を受けました。授業を重ねていく度に高まっていく子供たちの意識に圧倒されるとともに私の中にこびりついていた「不安」もいつの間にか消えて無くなっていました。

今回のみらプロの活動を通し、私の中での「不安」を中心に話を進めてきましたが、先生がゴールを設定するという学校の中での当たり前とは違う“生徒自身がゴールを設定する”という新しい授業形態をとった今回の活動の有意義性をとても感じました。この記事を読んでくださった方々にこの有意義性がうまく伝われば良いなと思う所存です。

子供たちにとってどういう「学び」になったか

次に、本活動での「学び」について述べていこうと思います。本活動は、小学校における総合的な学習の時間内での活動であったため、特に学校関係者の方たちの中で、本活動において実質どんな「学び」があったのかという疑問を抱かれる方が多くいらっしゃると考え、少しでもその疑問を晴らせれるようここに記述していきます。

今回の活動での一番大きな「学び」として挙げられるのは、“実社会や実生活の中から問いを見出し、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ表現することができるようにする”という「学び」です。これは「学習指導要領 総合的な学習の時間編」にも記載されている、総合的な学習の時間で育成することを目指す資質・能力の中に定義されている内容になります。

男木島という特殊な環境で過ごし、子供たちの目線から感じたこの島での問題を、子供たち自身で課題を設定し、課題解決に取り組んできたことにより横断的な情報活用能力や問題発見・解決能力の向上が顕著に見られました。他にも自分たちだけでわからないことやできないことを明確にし、それを大人に表現する力、そして周りにあふれている自分以外の人的リソースの活用など知識ではなく「生きる技術」としての力を養われているように感じました。これは児童たちにも総合的かつ探究的な学習自体の良さを理解するきっかけになり、教科の垣根を超えた「学ぶ」という行為自体を促進することに繋がると考えられます。

また本活動の総合的な学習の時間の中で有意義性のあるものとして挙げられることは、「社会に開かれた教育課程」という学習指導要領に新たに設定された基本方針に対しての提案性のある活動であるということです。今回行われた活動がより広く認知され、この活動に対する意見交換や「社会に開かれた教育課程」についての議論などが特に学校現場の方達との間で少しでも活発になれば嬉しく思います。

終わりに

この「男木島、未来の教育プロジェクト」に参加させていただき私自身、多くのことを学ばせていただきました。学校の先生方や保護者の方、地域の人々が子供たちの教育について真剣に考え、意見し合い、理想の教育を追求しようとする姿にとても感化されまし た。この記事を含め、本活動を知っていただいた方たちに子供たちの教育について今一度 考え直すきっかけとなれば幸いです。

ご精読ありがとございました。